「世界を変えた100の手紙(上・下)」コリン・ソルター著 伊藤はるみ訳
「世界を変えた100の手紙(上・下)」コリン・ソルター著 伊藤はるみ訳
必要とあらば、スマホやメールで、いつでも、どこからでも連絡がとれ、SNSで見ず知らずの人ともつながる現代。手紙は、いつしか時代遅れのコミュニケーションツールになってしまった。しかし、かつては手紙が一国の運命までをも左右するほど重要な役割を果たしていた時代もあった。そんな歴史に残る重要な手紙100通を紹介するビジュアルブック。
100通の中で一番古いのは、マケドニア王フィリッポス2世から届いた降伏を促す手紙に対する古代ギリシャの都市国家スパルタの指導者の返信。
降伏しなければ「わが軍が汝らの国に攻め入り、農地を荒らし、国民を奴隷にし、国を壊滅させる」というフィリッポス2世の脅しの手紙に対するスパルタ人の返答はたったの一言。「If(やれるものならやってみろ)」。
以降、百年戦争の最中に、読み書きができなかったジャンヌ・ダルクが口述筆記で敵軍を率いるヘンリー6世に送った自分には神が味方していることを告げる格調高い手紙や、ダーウィンにビーグル号に乗り込むことを勧める恩師の手紙など、現存するモノは、その写真も含め、多くの図版とともに手紙が書かれた背景や重要性などを解説。もしこれがなかったらと、つい想像してしまう貴重な手紙が時代別に並ぶ。
ライト兄弟が動力飛行機による世界初の飛行に成功したことを父親に伝える電報など、人類の輝かしき一ページを記録した手紙もあれば、第2次世界大戦中の原子爆弾開発に関するさまざまな手紙、そして環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんがテレビカメラの前でインドのモディ首相に行動を促すために読み上げた手厳しい手紙まで。
手紙によって歴史の一場面がリアルに再現され、ページを繰る手が止まらなくなるおすすめ本。
(原書房 各2640円)