スキルアップしよう!聞くこと話すこと本特集

公開日: 更新日:

「悪魔の傾聴」中村淳彦著

 メールで情報を伝えることはできても、人を行動に駆り立てるのは、やはり生身の言葉だったり、表情だったりする。話すことや聞くことのプロのスキルを拝借して、会話力のアップを図るべし!



「悪魔の傾聴」中村淳彦著

 相手の本音を引き出すには、自分の話をしない、相手の話を否定しない、自分の意見を言わない、アドバイスしないという、不作為の技術が重要。

 例えば、お洒落な店に行きたいと言われたとき、相手が「たまに行くのは池袋とかかな」と言ったのに「池袋はダメですね。本格的なシェフのいる青山とか麻布まで行かないと」と否定すると相手のテンションは下がる。池袋の店の話を聞いてから、新しい店の情報を知りたいという気持ちを確認して青山などの店を提案するとよい。

 また、相手が「近所の庄やが落ち着くので好きかな」と言ったのに、「僕は断然、磯丸水産派」などと自分の話にすり替えてしまうのは、聞くことを軸とする場合はあり得ない。

 かつてタレントの本音を引き出してしまい、芸能事務所の関係者から「悪魔みたいなやつだ!」と怒られた著者が教える、本音を引き出す技術。

(飛鳥新社 1540円)

「会話の科学」ニック・エンフィールド著 夏目大訳

「会話の科学」ニック・エンフィールド著 夏目大訳

 会話には誰かに質問されたら答えるべきだ、というような暗黙の規範がある。話し手が交代するときは、間が空きすぎたり、同じ人がまた話したりすることもあまりない。

 話し手は自分の話がもうすぐ終わるというサインを送っているので、聞き手は自分が話す番がくることを察知できる。

 イギリスのマーガレット・サッチャー首相は、インタビューの際、ジャーナリストに話を遮られてしまうことがよくあった。心理学者がその理由を突き止めるためにサッチャーの話の音声分析をしたところ、彼女はある特定のフレーズの終わりに急激にイントネーションが下がるクセがあり、それが聞き手にもうすぐ話が終わる信号だと取られたことが分かった。

 シドニー大学の言語学の教授が、会話を分析したユニークな本。

(文藝春秋 2420円)

「新時代の話す力」緒方憲太郎著

「新時代の話す力」緒方憲太郎著

 著者はアナウンサーをしていた父から「ちゃんと話す」ことを指導されてきた。「話す力」とは「話すことで、あなたが人から求められるようになる力」だと考えている。

 今、ゲームでアバターなどを使ってバーチャルな世界で自分を表現するとき、唯一、現実の世界から持ち込めるのが「声」だ。「話す力」を武器にするためには、スマホのボイスレコーダー機能を使って「自分の声を聞く」のもひとつの方法である。

 自分では気づかない会話のクセや間の取り方、テンションなどをチェックしよう。そして直したいクセや、いいなと思ったところを記録して採点する。その際は、いいなと思う人の話し方を手本にして、魅力的な要素を分析して真似てみる。一方で、自分が苦手な人の話し方も分析してみる。そうすることで自分らしい「話し方」の土台がつくれるようになる。

 プロが「武器」になる話し方を伝授。

(ダイヤモンド社 1760円)

「なぜか感じがいい人の聞き方 100の習慣」藤本梨恵子著

「なぜか感じがいい人の聞き方 100の習慣」藤本梨恵子著

 人に好かれるためには「良い話し方」より「良い聞き方」が重要である。初対面の人と会うとき、出身校が同じなどの共通点があると親近感がわく。それは「類似の法則」により心理的な距離が縮まるからだ。話しやすい雰囲気を持つ人は、自然に相手の言ったことを繰り返すペーシング(同調行動)を取っている。相手の呼吸やしぐさ、話す速度、話し方といった無意識的な部分を合わせると、より深く安心感や信頼感を与えることができる。

 また、人は自分に似た人に安心感や信頼感を持つ。相手のしぐさや言動を真似ることをミラーリングという。仲がいい人は自然にタイミングが合うので、コーヒーを飲むタイミングが同じだったりする。だが100%の完コピは不快感を与えるので70%程度が適切。

 好かれる人になるための習慣をアドバイス。

(アスカ 1760円)

「帰ってきた聞き出す力」吉田豪著

「帰ってきた聞き出す力」吉田豪著

 テレビ・ラジオ・ネットでインタビューをしている吉田は、インタビューの際は最低限の下調べはしておく。誰でも知っているエピソードではなく、新しい話を引き出さなくてはならないからだ。

 漫画家の魔夜峰央が宝石好きなことは知っていたが、最初の頃はスタールビーがどういうものか全然知らなかったと聞いて、「なんとなく描いていたわけですか?」と尋ねたら、調べるつもりもなかったと言う。

「パタリロ!」でヒースロー空港が出てくるが、これも調べたことはないという。実は「空想上の空港」だった。新宿歌舞伎町を描くときも、「新宿歌舞伎町」というナレーションひとつで済ませてしまう。「手間暇の無駄」とのコメントを引き出した。

「聞く力」と「聞き出す力」の違いが分かる、プロインタビュアーの極意を開陳する。

(集英社 1100円)

【連載】ザッツエンターテインメント

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…