血となり肉となる読書術が分かる本

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「百冊で耕す」 近藤康太郎著

 同じ本を読んでいても、ある人はただ読んだだけで終わり。でもある人は学びを通して大きく飛躍する……。こんな差が生まれるのは、読書術の違いにありそうだ。今回は、身になる読書術を体得するための5冊を紹介。

  ◇  ◇  ◇

「百冊で耕す」近藤康太郎著

 前著「三行で撃つ」では書くこと=アウトプットについて述べた著者。本書ではインプットのための読書術を示している。

 読書とは“問う筋力”をつけるトレーニングだという。本は答えが入っている箱ではなく、本の内容ににじりよっていくうちに、自分の言葉で問いを表現できるようになる。そして、正しく問うことができて初めて、暫定的な答えが現れる。ただ「知る」だけで終わらない体験こそが読書の醍醐味だ。

 しかし、そんな質の高い読書をするにはコツが要る。例えば、「一部読み」。古典など読み通すのが困難な本は、心に響くごく一部だけを、ただし繰り返し暗記するほど読んでみる。あるいは新聞の書評や解説本に頼るのもいい。予習してから本編を読むことで1冊読み通す助けになる。旅のガイドブックのようなものと捉えればいい。

 巻末には著者の血肉となった100冊を紹介。自分の100冊も見つけてみたくなる。

(CCCメディアハウス 1760円)

「読書原論」鷲田小彌太著

「読書原論」鷲田小彌太著

 21世紀の読書の在り方を提案する本書。もはや「紙」の時代ではなく、読書など古いと考える人もいるだろう。しかし、媒体がパソコンやスマホに変わっても、活字を読む能力はますます不可欠なものとなっている。情報社会にいる我々は、活字を読んで常に選択をしなければならないからだ。

 仕事力を増加させる方法も、それが技術職であれ肉体労働であれ、読書がもっとも簡便だと著者は言う。仕事関連の書物を読めば、体験的な知識や仕事を進化させる方法を知ることができる。これを実地に移せば、効果のほどをはかることもできる。一方で、読書をして身につけ“使用”した内容は、忘れてしまってもいいという。かつて「本を読まないと教養が身につかない」と言われ、暗記の読書が良い読書とされてきた。

 しかし21世紀の読書は「じゃんじゃん読んで、じゃんじゃん忘れる」のがベスト。それが新たな創造につながる読書だと説いている。

(言視舎 2200円)

「天才読書」山崎良兵著

「天才読書」山崎良兵著

 テスラCEOのイーロン・マスク、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ。彼らに共通するのは、世界一の富豪になった天才イノベーターというだけでなく、読書家であるという点だ。本書では、3人を取材した経験を持つジャーナリストが、彼らが愛読する名著100冊の読みどころを紹介している。

 例えば、破天荒なイノベーターとして注目されるイーロン・マスク。彼が読んでいた本で目立つのが、歴史関連の書籍だ。中でも古代ギリシャやローマ帝国に関する本が多いという。

 エドワード・ギボン著「ローマ帝国衰亡史」などは、何と初巻発売が250年近く前という古典中の古典。そんな古い本を読んで意味があるのかと思ってしまうが、歴代ローマ皇帝の成功や失敗、悩みに迫る示唆に富んだ内容で、リーダーのあるべき姿を考えるのに非常に役立つという。

 天才たちをつくった読書をのぞき見たい。

(日経BP 2640円)

「『技術書』の読書術」IPUSIRON、増井敏克著

「『技術書』の読書術」IPUSIRON、増井敏克著

 技術書(コンピューター書)に特化した読書術の指南書である。エンジニアが、新しい知識やスキルを習得しようというときに重宝する技術書。しかし、自分に合った本を探すのは至難の業だ。

 まずはネット注文よりも内容を見て検討したい人のための書店選び。大学や専門学校が近くにあれば専門書も充実しているが、都会の駅ナカなどでは電車内で読める新書など小さな本が多い場合があるので、立地は大切だ。また技術書に限っては、家電量販店でも書籍コーナーがあるケースもあるので狙い目だという。

 読むべき本としては、入門書・専門書・逆引きの3通りを読むことが望ましいという。例えばプログラミング言語を習得したいのなら、入門書と専門書を読むのが一般的だが、ここに加えたいのが逆引き。応用の事例が先に提示され、これをどうやって実現するかが解説されている。

 視点の異なる3冊を読めば、実務でも使えるレベルになれるそうだ。

(翔泳社 2200円)

「再読だけが創造的な読書術である」永田希著

「再読だけが創造的な読書術である」永田希著

 読書量は多いほどよいと言われ、ベストセラーを読んでいないと肩身が狭い思いをすることもある。しかし本書では、大切なのは多くの本を読み捨てることではなく、自分にとってのよい本を繰り返し再読することだと述べている。

 再読はネガティブとまではいかないものの、非生産的なニュアンスを感じるかもしれない。しかし、再読を繰り返すうちに初読では分からなかった要素の結びつきが分かるようになることがある。つながりが見えていなかったところにつながりを見いだせるなど、内容の解像度が上がり、その分、別の“分からない部分”が見えてきたりもする。

 さらに、初読のときとは異なった情報が与えられることで、脳内の情報ネットワークへの刺激にもなるという。ほかにも、注意深く再読することで良くも悪くも現状を変えようとしない「現状維持バイアス」の打破につながるなど、再読のメリットを解説。

 昔読んだあの本を再読してみるか。

(筑摩書房 1980円)

【連載】ザッツエンターテインメント

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