著者のコラム一覧
山上たつひこ

1947年、徳島県生まれ。70年「光る風」で注目され、72年「喜劇新思想大系」でリアルな画風のギャグを確立。74年連載開始の「がきデカ」が社会的ブームに。88年から小説執筆を開始。2014年、原作を担当した「羊の木」(いがらしみきお画)が文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。著書に「蝉花」「火床より出でて」「大阪弁の犬」「王子失踪す」ほか。

(40)廊下を横切る蛆は怒りの産物

公開日: 更新日:
イラスト とり・みき

 演出家は続ける。

「彼女は二人の男が世を去って初めて自由を得たのです。娘も同じです。彼女も母親に似て男に忍従することを受け入れて生きてきた。母と娘、女同士の穏やかな暮らしに彼女等は人生の充足を感じていた。そこへ降ってわいたような男──総領の帰還です。

 田野の身振り…

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