「警視庁 心理捜査官 捜査一課係長 柳原明日香」黒崎視音著

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「警視庁 心理捜査官 捜査一課係長 柳原明日香」黒崎視音著

 公安と刑事の間には根深い反目があるというのが通説だ。本書の主人公は、その犬猿の仲といわれる公安から捜査1課に転属したという変わり種。

【あらすじ】公安部第1課で、その冷徹な仕事ぶりから“公一の女狐”と呼ばれていた柳原明日香は、警視庁公安部内における権力抗争に巻き込まれ、公安を追われた。将来は警察庁に戻り、国際テロリズム事案と闘う公安の第一線につきたいと思っていた明日香は、その道を断たれ失意の底に落とされた。

 その明日香に手を差し伸べたのが捜査1課の管理官、鷹野弘志だ。鷹野の計らいで明日香は捜査1課第2特殊班捜査第5係係長に就任。田園調布の公園のベンチで、切り落とされた首が膝に載せられ、口には警察手帳をくわえさせられるという異様な遺体が発見される。被害者は西新井署勤務の現職警官で、10年前に田園調布署地域課に配属され、その後公安へ異動していたことが判明。元公安ということで大規模な捜査態勢が敷かれる可能性も出てきた。

 捜査責任者の明日香は、ほかの班が入り込む前に自らの手で解決を図ろうとするが、手掛かりは一向につかめない。しかも明日香の公安時代の部下であった日高冴子が捜査本部に参入してきた。やはり公安事案と関係しているのか。このままでは自分の手から事件が離れてしまう。

 焦った明日香は掟破りを承知で、明日香と同じく警視庁から多摩中央署に左遷させられていたプロファイリングを専門とする心理捜査官の吉村爽子を呼び寄せる。その吉村がプロファイリングした結果は思いも寄らぬものだった……。

【読みどころ】柳原明日香と吉村爽子を主人公とする「警視庁心理捜査官」シリーズのスピンオフ「柳原明日香」シリーズの第2作。 〈石〉

(徳間書店 737円)

【連載】文庫で読む 警察小説

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