「敬老の日」老い・介護本特集
「家で死ぬということ」石川結貴著
18日は敬老の日。人生100年時代といわれるが、忍び寄る老いと死からは何人たりとも逃れることはできない。そこで今週は、老いや介護と向き合ったときに参考となる4冊を紹介する。
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「家で死ぬということ」石川結貴著
遠距離介護で、希望通り、自宅で父を看取るまでの3年間の顛末をつづった体験記。著者の父親は妻を亡くして以来、実家で1人暮らし。自立心が強く、健康自慢で、「ピンピン生き、コロリと死ぬ」が持論で、「俺は家で死ぬ」と宣言していた。
ジャーナリストとして高齢者福祉の知識や専門家とのネットワークもある著者は、父の意思を尊重して最期まで支えていけると思っていた。しかし、現実は予想もしなかったことの連続だった。始まりは87歳の父が原付バイクで転倒、骨折して入院したことだった。著者は退院後も1人暮らしを続けられるよう、介護保険を申請するが、人に頼るのが苦手な本人は、やたらと文句をつける。
以後、新たに判明した持病の治療や、再びの救急搬送など、事態の変化とかたくなな父との葛藤を赤裸々につづりながら、介護サービスの現状と情報も盛り込み、ガイドブックとしても読める一冊。 (文藝春秋 1760円)
「認知症介護の話をしよう」岩佐まり著
「認知症介護の話をしよう」岩佐まり著
自らも若年性アルツハイマー型認知症の母親の介護中の著者が、認知症の家族と生きる10人の体験を紹介する聞き書き集。
中栄あけみさん(56)の母親に異変が起きたのは2018年ごろ。しかし、医師からは認知症ではないと言われる。母親はやがて昼夜逆転の生活となり、精神科に入院することに。そこでアルツハイマー型認知症と診断された母は、入院前は意思の疎通もできていたが、2カ月で寝たきりに。コロナで面会もままならなくなり、あけみさんは母親を家に連れ帰り、働きながら、自宅で介護する日々を送っている。
ほか、若年性アルツハイマー型認知症の妻の介護を20年以上続け、延命措置をするべきかどうか悩んだ三橋良博さん(69)や、精神障害の母親や祖父母の介護を続けてきたヤングケアラーだった村本めぐみさん(37)ら、10人の体験は壮絶であるが、介護によって自らの人生を豊かにするヒントも詰まっている。 (日東書院 1650円)
「シン・老人力」和田秀樹著
「シン・老人力」和田秀樹著
著者は、増え続ける高齢者のパワーこそが日本経済を救う原動力になると説く。WHOは高齢者を65歳以上と定義するが、60代、70代の大半は、身体機能も認知機能も若い世代と比べてもほとんど遜色なく、他の世代に比べてお金に余裕がある人も多い。約2000兆円といわれる日本人の個人金融資産のうち7割を60歳以上が持っているとされている。元気で自立し、消費者としても大きな存在である高齢者を「シン・老人」と名付け、彼ら彼女らがもつパワー「シン・老人力」の重要性をさまざまな観点から説いた生き方応援本。
何事も深めようとすることで心身を若返らせる力=「シン(深)・老人力」、いつまでも紳士淑女として見た目にも配慮する「シン(紳)・老人力」など、人生100年時代を元気に楽しく生きるコツから、80代、90代になって認知機能の低下や身体機能の衰えにいかに向き合うかまで、手取り足取りアドバイス。 (小学館 1430円)
「脳が老化している人に見えている世界」米山公啓著
「脳が老化している人に見えている世界」米山公啓著
年を重ね、脳の老化を感じると、認知症を疑い不安を抱く。しかし、脳の老化は高齢になって始まるわけでなく、名前を覚える力などは20歳前後をピークに次第に衰えているのだという。
一方で脳の老化は遅らせることもできる。本書は、脳の老化を遅らせるための正しい知識を紹介する健康テキスト。
実は基本的な計算能力は50歳、語彙力は67歳前後にピークを迎えるという。そんな脳についての基本知識を解説。
その上で、パズルを解くだけの脳トレでは認知機能の低下は防げないと指摘。絵を描いたり楽器を弾くなどの「知的刺激の高い活動」が良いが、そういうことに興味がわかない人にお勧めなのはテレビゲームだそうだ。
テレビのつけっぱなし、毎日の目標を立てるなど、やってしまいがち、よかれと思ってやっている習慣のどこがダメなのか解説した上で、脳が老けない生活習慣から食事、考え方まで具体的に紹介。 (アスコム 1540円)