今よりも幸せな人生のためのシン・生き方論特集
「シンプルで合理的な人生設計」橘玲著
世界は目まぐるしく変化し、人々の価値観も激変している。金や地位や名誉など、これまで成功者の証しと思われてきたものが、価値をなくす時代もすぐそこまできている。今回は、新しい時代に、より幸せな人生を送るための鍵を提示する、シン・生き方論の4冊を紹介しよう。
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「シンプルで合理的な人生設計」橘玲著
私たちは子どもの頃から“頑張ること”を求められ、さまざまな競争に挑んできた。しかし本書では、「競争の本質は競争しないこと」と説く。まるで禅問答だが、これこそが合理的に競争に勝つ近道だという。
例えば、サバンナでは同じ草食動物のシマウマとキリンがのんびりと過ごしている。これは、シマウマが草原の草を食べ、キリンは高いところにある木の葉を食べるというすみ分けをしているため。ナンバーワンかつオンリーワンの種しか生き残れないという、厳しい自然界の縮図でもある。同じように、人間も強者の土俵で戦ってはいけない。そのような競争には大きなコストがかかり、待っているのは“絶滅”の運命だ。それよりも、「変えられないものは受け入れて、変えられるものを変える」という合理的な生き方こそが成功の鍵だと本書。
視点を変えれば、成功は意外にも身近にあることを教えられる。
(ダイヤモンド社 1760円)
「グッド・ライフ」ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ著、児島修訳
「グッド・ライフ」ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ著、児島修訳
本書のベースとなるのは、2000人以上の人生を84年かけて調査した「ハーバード成人発達研究」。その結果から、幸福・健康・長寿における鍵を探っている。
被験者のジョンとレオの例を見てみよう。ふたりは同じ時代にハーバード大学を卒業。ジョンは弁護士となり華々しい経歴を重ねた。一方のレオは地元に残り高校教師となった。ジョンは被験者の中でももっとも成功した人物であったが、80歳を迎えた頃、強い孤独に苦しめられていたという。それはなぜか。
本書では、被験者に対する質問票も開示しているが、ジョンは悩みを妻にも相談することなく、人間関係が希薄だったことが分かる。一方、レオの回答はジョンとは逆のことが多かった。
よい人生にはよい人間関係が不可欠。使い古された言葉のようだが、史上最長とうたわれる追跡調査による説得力は強い。
幸せの本質とは何か、改めて知るための良書だ。
(辰巳出版 1870円)
「これからの生き方図鑑」樺沢紫苑著
「これからの生き方図鑑」樺沢紫苑著
精神科医歴30年以上の著者が、豊富なエビデンスから導き出した幸せな生き方のための47のノウハウを伝授する。
不景気と物価高で金の心配が尽きない昨今だが、実は金がもたらす幸福感は持続しないことが分かっているという。そこにはドーパミンという脳内物質が関係しており、別名幸福ホルモンとも呼ばれているが、効果はせいぜい2カ月、長くても3カ月しか続かない。
一方で、会話を楽しんだりボランティア活動をしたときなどに感じる、人とのつながりと関連した幸福には、オキシトシンという脳内物質が作用している。そしてその幸福は、劣化しにくいことが分かっているという。金を得ようと躍起になるよりも、人とのつながりを強化することが幸せにつながりそうだ。
悩みはあえて言語化することで解消される、ジョギングより7時間以上睡眠をとる方が痩せるなど、新しい生き方のヒントが満載だ。
(光文社 1760円)
「激変する世界で君だけの未来をつくる4つのルール」尾原和啓著
「激変する世界で君だけの未来をつくる4つのルール」尾原和啓著
近年、人々の価値観は大きく変化した。テクノロジーの進歩で“ないもの”がなくなり、機能性が優れているものよりも、ストーリーがあり何らかの“意味”を与えてくれるものの価値が高まった。
そしてこの傾向は、人間にも当てはまると本書。誰かにとって“意味”のある内面を伴った人こそが求められ、そんな時代を生き抜くためのルールのひとつが、「他者になにかを与えること」=「ギブ(GIVE)」であるという。
ギブするのはモノでも、感謝や励ましの言葉など無形のものでもいい。大切なのは、相手の視点で考え、相手が欲しいものを贈ること。これができると、相手は「自分のことを考えてくれた」と感じ、好意と信頼が生まれる。さらに、相手の視点で考える習慣がつくことで、自分自身もギブを通して成長できるのだ。
新しい時代に求められる人間になりたいなら、新しい生き方のルールを知ることが大切だ。
(大和書房 1540円)