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「ヒトは軍用AIを使いこなせるか」ジェームズ・ジョンソン著 川村幸城訳

 あらゆる分野に革命を起こすAI(人工知能)。特に軍事技術への進出はめざましい。

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「ヒトは軍用AIを使いこなせるか」ジェームズ・ジョンソン著 川村幸城訳

 AIの活用は従来の国際関係に重大な影響をおよぼす。2017年、ロシアのプーチン大統領は「AIのリーダーが世界の支配者になるだろう」と語り、アルファ碁が人間に勝利したことにショックを受けた中国は「軍民融合」政策を加速した。ロシア軍は25年までにロ軍の30%をロボット化する計画なのだ。この状態が従来の大国間関係を「不安定化させる」という本書の著者はイギリスの国際政治学者。特に新興技術と核抑止論を専門とする。

 軍事とAIについて考えるときに大事なのは、AIの使い方そのものの案出が目的というより、AIを使用する大国間の競争や関係に与える影響を正確に見抜くこと。つまり核を持つことで自分と相手の関係がどう変わるかを考えることと同じなのだ。

 初期AIのアルファ碁が人間に勝利したとき、中国の軍事関係者が多大な衝撃を受けたのも、まさに相手の出方の「読み」の精度に関わることを悟ったからだ。

 本書では米中関係の具体論は実は限定的。しかし中国の先には人口最多となるインドが控えている。西側の一国でありながら独自の政治バランスと強大な軍事技術力を持つ国について先読みする必要もあるだろう。

(並木書房 2420円)

「AI海戦 人工知能は海戦の意思決定をどう変えるのか?」サム・J・タングレディほか著 大野慶二ほか訳

「AI海戦 人工知能は海戦の意思決定をどう変えるのか?」サム・J・タングレディほか著 大野慶二ほか訳

 軍におけるAIの活用は陸海空すべてにおよぶ。本書は米海軍のケーススタディーだ。分厚い軍事専門書だが、全19章とまえがき・あとがきで構成される各論に共通の論点は2つ。第1はAIをみだりに信頼すべきでなく、ゆえにAIの信頼性を高めるにはどうするか。第2はオフセット戦略のためにAIをいかに活用するか。

「オフセット戦略」とは相手の優位に対してそれを「オフセット」(相殺・肩透かし)するような自分の優位を構築すること。米軍は世界最強だが、冷戦期にはワルシャワ条約軍の小規模部隊が戦術核兵器を装備して欧州で優位を誇った例もある。軍事の世界では各戦域ごとに優劣があるのだ。

 特に近年の中国の台頭と部分的優位は無視できない。それを凌駕するためにAIをいかに活用するか、その具体策が本書には詰まっている。AI開発は特定の軍事状況だけでなく、政府の性質(権威主義か民主主義か)にもよるという指摘に納得。

(五月書房新社 6600円)

「作戦指揮とAI」井上孝司著

「作戦指揮とAI」井上孝司著

 先端技術は軍事に使われるのが常道。むろんAIも例外ではない。本書は軍事にくわしい技術系ライターによる解説書。

 軍事におけるAIの活用は、高性能の誘導型ミサイルの進化にともなって高度な目的識別用に導入されたのが初めてだという。本書は空域を主体に、海域での活用にも目を配る。むかしは戦艦が艦隊の旗艦をつとめたが、現代の艦隊では全体の指揮を大々的に執る必要性から通信機能に多くを割くことができる揚陸指揮艦などがつくことが増えている。

 しかも上級司令部は陸上から指令することが多い。米軍だけでなく海自でも同様。映画「トップガン」のような空中戦にAIを活用するには1対1や1対多、多対多など複雑な状況についての情報を膨大に学習させねばならず、それが課題になっている。

 著者が自衛隊関係者でないため、素人にもわかりやすい記述が特徴。

(イカロス出版 1760円)

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