「恋愛結婚の終焉」牛窪恵氏

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「恋愛結婚の終焉」牛窪恵氏

「2015年に『恋愛しない若者たち』を書いた当時から、恋愛結婚を前提とする限り、若者はますます結婚しなくなると思っていました。望まないなら無理に結婚する必要はないのですが、恋愛しないと結婚できないとの思い込みにとらわれていたら後悔するかもしれない。本書執筆にあたって、こうした人に向けて恋愛結婚という呪縛に縛られなくてもいいよと伝えたかった」と著者。

 国立社会保障・人口問題研究所の2021年の調査によれば「いずれ結婚するつもり」と回答した人は8割以上。半面、多くは「恋愛が面倒」と考えており、そのことが婚姻率低下を招いている可能性がある。しかも「結婚するつもり」の割合も近年減少しており、未婚化・少子化に拍車がかかるばかりの現状だ。

「おひとりさまマーケット」などを提唱し時流を読むことに長けている著者は、本書で今の時代、なぜ恋愛結婚に無理があるかを論文やデータを基に多角的に読み解いた。

 社会学、歴史学、科学(脳科学、進化人類学)、行動経済学の視点で恋愛と結婚の関係について解説、さらに未婚化・少子化の解決策を提言する。

「恋愛結婚が難しい理由のひとつに、恋愛で相手に求めるニーズと、結婚で相手に求めるニーズが真逆に近い現状が挙げられます。同調査の『結婚相手に求める条件』では女性の約97%が男性に『家事・育児の能力や姿勢』を、男性の約48%が女性に『経済力』を望んでいます。ところが恋愛では、女性は男性におごってもらうことやエスコートを求め、男性は女性に女性らしさや若さを求めるなど、過去の恋愛像にとらわれたままです」

 ドキリとした読者もいるのではないか。歴史的にも、恋愛と結婚と出産の3つを結び付けて考える「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」が欧米から日本に輸入されてまだ60~70年。脳科学的にも恋愛で働くのはドーパミン系の物質で、幸せな結婚生活で活性化するのはセロトニンなど癒やし系物質で真逆だという。

■「推し活」で脳に恋愛の喜び

「実は恋愛と結婚は、『まぜるな危険』なんです。バブル期のドラマ『101回目のプロポーズ』をZ世代に見せると、『ふられても懲りないなんてストーカー』という反応が返ってきます。イマドキの若者には恋愛はリスクで、別れたらリベンジポルノやストーキングされる恐れもある。結婚後に恋に落ちて不倫でもすれば社会的な制裁も強烈。いま『推し活』が流行している一因も、周囲とともに推しを応援すれば、争いもなく安全で、かつ脳が恋愛と似た喜びを感じられるからです」

 著者によると、「蛙化現象」(理想の王子様だと思って付き合った人のささいなことで急に気持ちが冷める現象)という言葉の流行も、脳内で恋愛イメージが膨らむ一方で現実と乖離が起きやすいことを示しているという。

 では、恋愛が難しくなった今、結婚したい人々はどうすればいいのか。

「恋愛よりも信頼に軸を置いた『共創結婚』を目指すことですね。恋愛力を重視せず、互いが信頼し合って穏やかに生活できるかを軸に相手を選ぶ。モテないと思い込む人も諦める必要はない。人生100年時代、生活をともにする相手を探そうと切り替えれば、きっと道が開けるはずです」

(光文社 1034円)

▽牛窪恵(うしくぼ・めぐみ) 世代・トレンド評論家。立教大学大学院客員教授。2001年にマーケティング会社インフィニティを設立。同社代表取締役。「恋愛しない若者たち」「若者たちのニューノーマル」など著書多数。テレビコメンテーターとしても活躍中。

【連載】著者インタビュー

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