(1)練り香の奥ゆかしい香りが漂う
(一)
青磁の香炉と香箸、炭に練り香。香を薫く用意が調ったのを確かめ、おみつは火を熾した。
黒い炭のかけらにともった火は控えめだが、美しい橙色の光を放つ。夜空に輝く一つ星のように、あるいは、沈む間際の夕陽のきらめきのように。
おみつは小日向に店をかまえ…
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