「江戸東京《奇想》徘徊記」種村季弘著
「江戸東京《奇想》徘徊記」種村季弘著
東京各所を巡り、埋もれた土地の歴史を掘り起こす街歩きエッセー。
昭和10年代の目黒の風景を書き残した同区生まれの作家・礒萍水(いそひょうすい)の随筆には、かつてあった竹藪が消え、いまでは圓融寺だけが昔の面影をとどめているとある。
平安時代前期開基の圓融寺は、鎌倉時代に日蓮宗に改宗、法華寺と称した。江戸の寛永年間、江戸市中から見れば竹藪だらけのド田舎の碑文谷の同寺に怒涛のように参詣人が押し寄せ大繁盛した。その理由は、「蓮華往生」という怪しげなアトラクションにあったという。(「碑文谷の蓮華往生」)
以下、広重の「名所江戸百景」にも描かれる「目黒新富士」や、永井荷風の小説に登場する森ケ崎鉱泉など。東京の知られざるスポット30を巡る。
(朝日新聞出版 1210円)