「日本語と漢字」今野真二著
「日本語と漢字」今野真二著
かつて日本語は、言語を視覚的にあらわすための文字を持たない「無文字言語」だったが、5世紀半ばに日本語をあらわすための文字として漢字を使い始め、「かきことば(文字言語)」がそろった。
音声言語を文字化するにあたって「文字化のしかた」が1つしかない言語は「正書法があることば」と呼ばれる。例えば日本語では「心」は「こころ」「ココロ」と少なくとも3通りの文字化の仕方がある。だが、英語の「heart」はローマ字をこの順番に並べなければ間違ったつづりになるので正書法があることばということになる。
日本語は、表音文字である仮名を生み出した後も表意文字である漢字を使い続けた。本書は、「正書法がない」という観点に注目して日本語の歴史を解説したテキスト。
(岩波書店 1034円)