当選するのは誰だ!?都知事選前の再点検

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「徹底検証!東京都政」山本由美、久保木匡介、川上哲編著

 いよいよ都知事選目前。コロナ対策から少子化問題まで、4年前からの歩みを再点検する4冊をご紹介。



「徹底検証!東京都政」山本由美、久保木匡介、川上哲編著

 今回の都知事選では関連する書籍がいかにも少ない。小池礼賛・批判どちらもが盛り上がりを欠いているのだ。要は小池都政へのうんざりするような思いばかりが積もる低迷選挙ということだ。本書はその中で珍しく真っ向から小池都政の問題点に具体的に切り込む。特に今回の知事選、最大の争点である神宮外苑の並木道の破壊計画は、第1章でくわしく論じられる。

「都市再開発」の美名に隠れて歴史的に維持されてきた地域の3000本の樹木をことごとく伐採。容積率の緩和で高層ビルを乱立させるというのはまるで地上げ屋の手法だろう。政府自民党と結託した「国家戦略特区」を悪用した再開発の問題点も第2章で検証される。ほかにも民営化による公教育や保育の劣化などを正面から論じて副題「巨大再開発、DX・GXで東京のまち・自然が破壊される」に偽りなし。

 編著者らは一般社団法人「東京自治問題研究所」というシンクタンクを率いるメンバー。日本全国にまたがる「自治体問題研究所全国ネットワーク」の一環をなす。本書にも大学研究者、ジャーナリスト、組合活動家ら30人以上がずらりとくつわを並べて今回の低迷選挙の真の争点を明らかにしている。 (旬報社 1870円)

「新データで読む地域再生」日本経済新聞社 地域報道センター編

「新データで読む地域再生」日本経済新聞社 地域報道センター編

 都知事選で各候補者はさまざまな政策を訴えているが、果たして東京の現状を地方との比較データで見てみると面白い。

 例えば出生率。全体的には低下しているが、2005年と22年を比べると27都道府県が上昇。トップは徳島県、2位は宮崎県だ。この2県は産後の負担軽減策で円滑な復職を支援。ほか鳥取県など、働きながら子育てしやすい環境づくりに力を入れる自治体が上位に入った。ちなみに東京は17位。

 超高齢化社会を迎え、看護師不足も深刻だが、西日本が対応先手。看護師数1位は高知県、2位は鹿児島、東京は44位。離職防止策や看護学校の奨学金返済免除などの手厚さで功を奏したようだ。ほかサウナ数、起業家教育、文化事業支援、子ども予算など67のデータを通して地方と東京の今が見えてくる。 (日本経済新聞出版 2090円)

「知事の真贋」片山善博著

「知事の真贋」片山善博著

 鳥取県知事時代に「改革派」として県政に新風を呼び、全国的な知名度を得た著者。その経験をもとに4年前に書かれたのが本書だ。

 折からコロナ禍の真っ最中とあって、前代未聞の騒ぎの中で各自治体の対応も問われた。たとえば全国の学校が休校に追い込まれたが、実は手続きは安倍首相(当時)が全国に休校を要請し、各知事が一斉に従ったことによる。

 しかし、休校は教育委員会の仕事。知事には休校を指示する権限はない。本当は、首相の要請に対して知事が「防波堤」になって教育委員会の仕事を守り、そこで休校を検討すべきだった。でなければ、地方「自治」は成り立たないのだ。まさに正論。

 逆に五輪開催都市として神経をとがらせておくべきだった東京の小池知事は反応鈍く、五輪延期決定がなされてからいきなり動きだす始末だった。

 いま改めて読み直すに値する知事論だ。 (文藝春秋 880円)

「小池百合子 権力に憑かれた女」和田泰明著

「小池百合子 権力に憑かれた女」和田泰明著

 テレビ東京のニュースキャスターを振り出しに、政界でのし上がった小池都知事。本書は「週刊ポスト」から「週刊文春」と政治畑を歩いてきた著者が間近で見た“小池劇場”の舞台裏。

 これも4年前の刊行だからコロナ対策の話が多くなるが、著者は都知事の対応がずさんというより、実はコロナ対策を都知事選のために「政治利用」したことが問題だという。ふだんから親しい自民党の二階幹事長(当時)からの隠密の要請を受け、コロナ防護服の余分を中国に無償提供して点を稼いだ。これを都議会で突かれるまで伏せておいたのだ。

 記者会見しても自分の言いたいことだけで切り上げる。キャスター上がりだけにニュース映像になりやすい一瞬の演出には長ける。4年前の本書の厳しい指摘はいまも有効だ。 (光文社 1078円)

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