「笑う森」荻原浩著
「笑う森」荻原浩著
ある日、小樹海と呼ばれる「神森」のトレッキングコースに母親と来ていた5歳の男児・真人が行方不明になった。発達障害のある真人はひとつのことに集中しがちで、そのとき夢中になっていたのは合体樹と呼ばれる大木だった。シングルマザーの岬は真人に合体樹を見せるために神森まで来たのだが、数秒目を離した隙に真人がいなくなったのだ。
季節は11月。生存は絶望的かと思われた1週間後、合体樹の洞にいる真人が発見された。多少衰弱していたものの、真人の体重は減っておらず、どのように過ごしていたかを尋ねても「クマさんが助けてくれた」と言うだけ。岬は真人が行方不明になって以降、子どもを顧みない母親というレッテルを貼られて、バッシングにさらされていた。
真人の叔父で保育士の冬也は、謎の1週間の真人の行動を探りつつ、バッシングしている犯人を見つけようと思い立つ。果たしてその真相とは……。
1週間、森の中でなぜ5歳の子どもが生き延びられたのか。戻ってきてから真人がなぜか言うようになった口癖や、突然治った偏食などから推理を重ねる冬也の観察眼が興味深い。 (新潮社 2420円)