「女たちの避難所」垣谷美雨著

公開日: 更新日:

「女たちの避難所」垣谷美雨著

 3月11日に起きた地震と津波に遭遇し、命からがら避難所にたどり着いた異なる年代の女性3人を主人公に描く震災小説。

 55歳の福子は津波に流されていた少年を連れ、乳飲み子を抱いた28歳の遠乃は舅と義兄と、息子とはぐれたシングルマザーの渚は一人、避難所にやってきた。

 ところがリーダーを買って出た男性が「絆と親睦」の名のもと仕切りは使わない、と宣言。遠乃は赤ん坊に授乳する姿を舅にのぞかれ、さらに姑を見殺しにしたとなじられた。トイレは男女兼用、自衛隊の野営風呂にも「男を先に入れろ」と迫り、レイプ未遂は黙認。そんな男尊女卑がはびこる避難所で3人は出会った。

 彼女たちの被災体験から浮き上がるのは、日本社会の縮図であり、女性の生きづらさだ。何かと依存してくる「夫」、「みんな大変だから」と抑え込まれる不満、共同体の圧力。読み進めるうち、災害の際にも女性の我慢が前提の日常に、ふつふつと怒りが湧いてくる。

 (新潮社 737円)

【連載】古今災害小説7選

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松本人志は「女性トラブル」で中居正広の相談に乗るも…電撃引退にショック隠しきれず復帰に悪影響

  2. 2

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  3. 3

    べた褒めしたベッツが知らない、佐々木朗希"裏の顔”…自己中ぶりにロッテの先輩右腕がブチ切れの過去!

  4. 4

    フジテレビ労組80人から500人に爆増で労働環境改善なるか? 井上清華アナは23年10月に体調不良で7日連続欠席の激務

  5. 5

    ついに不動産バブル終焉か…「住宅ローン」金利上昇で中古マンションの価格下落が始まる

  1. 6

    露木茂アナウンス部長は言い放った「ブスは採りません」…美人ばかり集めたフジテレビの盛者必衰

  2. 7

    中居正広「華麗なる女性遍歴」とその裏にあるTV局との蜜月…ネットには「ジャニーさんの亡霊」の声も

  3. 8

    和田アキ子戦々恐々…カンニング竹山が「ご意見番」下剋上

  4. 9

    紀香&愛之助に生島ヒロシが助言 夫婦円満の秘訣は下半身

  5. 10

    フジテレビにジャニーズの呪縛…フジ・メディアHD金光修社長の元妻は旧ジャニーズ取締役というズブズブの関係