「ムーンナイト・ダイバー」天童荒太著

公開日: 更新日:

「ムーンナイト・ダイバー」天童荒太著

 震災から4年後のある夜、瀬奈舟作は亡くなった父の同級生で今年66歳になる文平が操る舟で海に出た。ダイビングスーツに着替えた舟作が月の明かりを頼りに海に潜り、“思い出の品々”を回収する。県の職員である珠井が大切な人を失った人<会員>たちを内緒で募って始めた活動で、2人は珠井に口説かれての手伝いだった。ただし貴金属類は引き揚げない。金目当てと誤解を生みかねないからだ。

 舟作自身も震災で両親と兄を失っているが、なぜ自分が潜るのか分からぬまま潜り続けてきた。

 ある日、会員の一人で眞部透子という女性が舟作を訪ねてきて、「指輪を探さないでほしい」と言う。理由を尋ねても「見つけてほしくない」と言うばかりだ。その理由とは一体……。

 2011年3月11日に起きた震災を背景に描いた物語。生き残った者たちの複雑な思い、罪悪感、立ち直ろうとする姿が胸に迫ってくる。

 (文藝春秋 704円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動