小路幸也(作家)
9月×日 筒井功著「日下を、なぜクサカと読むのか 地名と古代語」(河出書房新社 2970円)をSNSで見かけて即購入。
いやもう〈腑に落ちる〉とはこのことか! と。古地名語源の実証研究というフィールドワークの成果がこんなにも楽しいものなのかとワクワクしながらページを捲ってしまった。
その昔に映画「バックドラフト」を観たときに、〈もしも中学生の頃にこれ観たら絶対に消防士を目指したな〉と思ったのだけど、もしも中学生のときにこの本を読んでいたら〈将来は大学で地名と古代語の研究をしよう!〉と思ったのに違いない。いや、マジで。それぐらいおもしろかった。
9月×日 コミックで冬目景著「百木田家の古書暮らし」(集英社 715円~)を全巻読む。
神保町で祖父の古書店を引き継いだ美人三姉妹それぞれの恋と日々と青春の物語。実力ある漫画家さんなので、もちろんおもしろいに決まってる。
そして古書店の〈お仕事〉をきちんと取材して描いてくれているので、ビジュアルの資料としても非常に良い。何よりも冬目景さんの描く女性がめちゃ好みなのだ。
この本に限らずだけど、小説家は作品を書くのにいろんな資料は揃えるけれども、実力ある漫画家さんの描くものが、〈絵的〉な資料としては一級品だと思っている。
10月×日 ちょっと必要があってミヒャエル・エンデ著「はてしない物語」(上田真而子 佐藤真理子訳 岩波書店 3146円)を探したんだけど、見つからない。
確かに相当昔にだけど買っているので、家の本棚のどこかにあるはずなんだけど見当たらない。ひょっとしたら誰かに貸してしまったかあげてしまったのか。改めてネットで購入。
あぁいい造本だなぁと見入ってしまう。これ確かバブルの頃に作った本だよなー、この頃はどこも予算あったよなー、などと、バブル時代ど真ん中経験者は詮無いことを考えてしまう。