「この世の花」佐々木裕一著
「この世の花」佐々木裕一著
真島家の四女・花は、正月を迎え14歳になった。父の兼続は、徳川譜代の名門で、広大な敷地内には兼続と正妻の藤らが暮らす屋敷のほかに、花が兼続の妾(めかけ)である母のふきと暮らす小屋などが並ぶ。
兼続は、4人いる妻や妾の中で誰よりもふきを寵愛。それが気に入らない藤は、なにかとふき母娘を目の敵にする。一方で花は、世継ぎである兄の一成とその親友の信義から可愛がられている。信義は9000石の旗本家の長男で、藤らは自分の娘を嫁がせようと虎視眈々と狙っている。
兼続は、信義に花を嫁がせたい。兼続が一成にその胸の内を明かした内輪話が藤の耳に入ってしまった。そんな中、兼続が大坂城番を命じられ、屋敷を留守にすることに。
虐げられながらも、一途に生きる花を主人公にした時代小説。
(角川春樹事務所 748円)