「花散る里の病棟」帚木蓬生著
「花散る里の病棟」帚木蓬生著
内科医の伸二は、退院後に行き場を失う老人たちのために、介護老人保健施設や介護老人福祉施設を医院に併設。伸二には入所者全員が、今は亡き両親のようにも感じられ、診療の合間に会いに行くのが楽しみでもあった。
そんなある日、離れた市の警察から身元照会の連絡が入る。保護した老人の小銭入れに診察券が入っていたらしい。保護されたのは確かに伸二の患者のナツだった。ナツは伸二の故郷に近いN村の出身だが、息子との同居を機に伸二の医院に通院するようになった。しかし、診察のたびにナツの表情が暗くなっていくのが気になっていたのだ。(「彦山ガラガラ 二〇一〇年」)
伸二とその祖父・保造、父の宏一、そして息子の健と、医師4代100年を描く大河小説。 (新潮社 880円)