熱狂というより、お祭り感覚に近いノリで活動
「ルポ アフリカに進出する日本の新宗教」上野庸平著 花伝社 1500円+税
ソ連が崩壊した90年代前半のロシアで、急速に信者を増やし、勢力を広げたのがオウム真理教だった。それが再び息を吹き返し、今年3月には旧ユーゴスラビアのモンテネグロで日本人を含む信者約60人が拘束され、翌4月にはロシアのモスクワとサンクトペテルブルクで関連施設への強制捜査が入っている。危機感を強めたロシアは、9月20日にあらためて教団をテロ組織と認定し、活動を封じ込めた。
そんな時に手にしたのがこの本だった。西アフリカの小国ブルキナファソに在住する著者が、現地の信者と施設を訪ね、活動の実態を伝える、表題通りのルポである。
幸福の科学、真如苑、崇教真光、創価学会、それにフリーセックス主義を掲げるラエリアン・ムーブメント。
フランス人ラエルが創設し、なぜか日本人の入会者が世界でもっとも多く、ラエルも沖縄に移住し、活動の拠点を日本に置いているという。
ラエリアンの現地での活動はユニークだ。女性に快楽は必要ないという思想から、アフリカでは女子割礼という性器切除がいまでも行われている。これに反発し、現地に「クリトリス再生」のための病院の建設を真剣に目指している。
そこで著者が出会った現地の信者は、その前は統一教会に入信していたことを知る。アフリカでは、あっさりと改宗して、宗教を渡り歩き、妻子が他教徒でも構わず新宗教に入信していく。
その統一教会も、貧困国で高額の壺を売りつけるようなことはしない。合同結婚式で現地人の妻になった日本人が、地道に布教を続ける姿がある。
各教団の支部活動は、熱狂的というよりは、小規模のサークルやお祭り感覚に近いノリ。若い著者はそこに奇妙な共感を抱くのだが……。
急速な経済発展によってもたらされる新秩序は、個人にアイデンティティーの再構築を求める。そこに宗教は有効だ。だが、その先祖返りの典型がイスラム過激派であるように、多様化する価値観の中で、新宗教もいつカルト化するとも限らない。オウム事件を知る世代の老婆心だろうか。