益岡徹デビュー秘話 仲代達矢が開演30分前に“代役”指名
初舞台を務め上げた益岡は、それから無名塾公演のレギュラーとなり、30歳まで7年間、仲代の下で腕を磨いた。益岡は声を詰まらせる。
「目の前の作品に向かうのが精いっぱいで、仲代さんへのご挨拶とか、後輩の塾生を激励することもなく、ここまできてしまいました。出来の悪い弟子ですが、すべて師匠のおかげ。今、若い人から助言を求められることがあると、無名塾で仲代さんからしてもらったように、させてもらっているんです。心構えではなく、具体的な技、ディテールを磨けって」
仲代に35年前の益岡の代役のことを聞くと、「彼は秀才ですよ。技、風貌といい、際立っていましたからね」と言いながら、懐かしそうにほほ笑んだ。
仲代と益岡は今月、朗読劇の第一人者、白石加代子(73)とともに「死の舞踏」(ストリンドベリ作、小林政広演出)の舞台に立つ。東京公演は博品館劇場で22日まで。