「筆が速い僕に依頼が…」喜多條忠氏が語る名曲「神田川」秘話
「歴史に残る名曲になる。これを出さなかったら、日本クラウンの未来はないぞ」
フタを開ければ、馬渕さんがおっしゃった通りの大ヒット。160万枚超のセールスを記録しました。かぐや姫は人気グループに成長し、ボクは作詞家の道へ進むことになったわけですが、あの馬渕さんの鶴の一声は大きかったですね。あれがボクにとって、人生の転換点かな。
馬渕さんは、日本コロムビアで全盛期の美空ひばりさんを3年間担当した名ディレクターです。40歳の時に日本クラウンの設立メンバーになり、北島三郎さん、水前寺清子さんら大御所と歌謡界の発展に大きな足跡を残されました。五木寛之さんの小説「艶歌」で、「艶歌の竜」こと主人公・高円寺竜三のモデルになった、昭和歌謡界の巨星ともいえる方でした。
13年11月に亡くなられた島倉千代子さんの遺作「からたちの小径」は、ボクとこうせつが手掛けた作品。その55年も前、島倉さんのミリオンセラーで、代表曲のひとつとされるのが、馬渕さん担当の「からたち日記」。「神田川」の時からこうせつ、馬渕さんとは不思議な縁とありがたさを感じずにはいられませんね。