チワワCMの清水章吾 「人間国宝」から学んだ先読みと気遣い
ただ、とても厳しい方でね。舞台に上がった途端、パーッと大輪の花が咲いたかのような美しい女形なのに、舞台を下りたら、チャキチャキの江戸っ子で、短気な上にベランメエ調。
例えば先生がエヘンと咳をするでしょ? そのタイミングとか加減、状況で、お茶が欲しいのか、痰ツボをお求めなのかを判断しなくてはならない。
ある先輩が間違えて痰ツボを出したら、先生怒っちゃって、「バカヤロー!」ってそれを投げつけた。でも、「先生、今日はお勉強させていただきました」って、三つ指ついて詫びてましたよ。そんな師弟関係でしたから、ほとんどの人は1年も続かないんです。
ただ、学ぶことはとてつもなく大きかった。役者を続けていられるのは、先生に教えていただいたからでしょう。
一番強調されたのは先を読むことでした。舞台に上がると次に何をしたらいいのか、他の役者さんの動きやセリフを見越した上で、自分の役柄に合った動きをしなさい、と。
プロンプターを任された時もそう。「セリフを失念したことに気が付いてからじゃ遅い。気配を察しなさい」とおっしゃるんです。