<第1回>突然の訃報。私は急いで自宅に向かった
勝さんと親しい映画関係者は沈痛な面持ちでそう話した。
勝さんの右腕、勝プロモーション常務の真田正典さんが玄関フロアに姿を現すと、報道陣が“囲み”をしてコメントを取る。真田常務は誠実にマスコミに対応し、まるで勝さんの遺志を守っているようにみえた。
黒沢明監督の映画「影武者」降板騒動、12億円の負債を背負っての会社倒産、そして1990年、ハワイ・ホノルル空港でコカイン所持現行犯逮捕。逮捕後の記者会見では「なぜ、パンツの中に入っていたかわからない。今後は同様の事件を起こさないよう、もうパンツをはかないようにする」ととぼけ通した勝さん。スキャンダラスな一方、訃報取材で私はあらためてその人柄に触れ、心底好きになった。“コカイン裁判”待ちの勝さんに密着した芸能リポーターの梨元勝さんを取材すると、こんな話を教えてくれたのだ。
「パールシティーの民謡酒場で『俺は泣きたいんだ』と言ってワンワン泣くんです。サングラスの下からポロポロ涙がこぼれて『俺はなんてバカなんだ。ここにいる真田(常務)も京都大学を出て、同期は社長や議員になっているのに、俺についてきちゃったばかりに、また金の苦労だ。玉緒は俺に惚れていたからいい。でも真田は……』。ワンワン泣きながら『俺にいま、してやれるのはこれだけだ』と、真田さんの飲んでいた日本酒のとっくりを持って自らつぐんです。そばで付き人は泣いていましたね」