35歳でプロ再挑戦 脱サラ棋士・瀬川晶司氏「決断の瞬間」
「他の世界を見たから、もう一度、プロ棋士を目指せたのだと思います」
2005年11月にプロ棋士四段となり、初の脱サラ棋士として注目される瀬川さん。96年、26歳の時に奨励会を退会し、サラリーマンを経験した。約10年のブランクを経て再びプロの道を目指したのは、35歳の時である。
「奨励会に入会したのは中学生の頃です。生涯プロとしてやっていくものだと思っていました。でも、プロになるには年齢制限があって、26歳までに四段にならないと資格を失う。私は一歩手前の三段で退会しました。いったん将棋から離れて大学に進み、将棋は“趣味”となったのです」
大学を卒業後、NECの系列会社に就職し、NEC将棋部に所属。楽しんで指しながらも、アマチュア大会で活躍。プロ大会への出場資格も得て、好成績を挙げていく。05年2月末、プロ編入の嘆願書を日本将棋連盟に提出。プロ相手の戦績は17勝6敗だった。
「決断のきっかけは、アマチュアの友人たち。『これだけ勝っているんだから、もう一度目指したらどうか』という言葉に背中を押されました。将棋は保守的な世界ですし、制度がある以上、受け入れてもらえないだろうと考えていました。でも、回り道をしたからこそ、好きなことを仕事にできる人生は幸運だとも感じていた。『後悔したくない』という思いも強かったです」