<第1回>ロマンポルノの現場は刺激的でした
刑事からヤクザ、サラリーマン、不良中年まで幅広い役を演じたら、この人の右に出る者はいない。“300の顔を持つ男”の異名を持つ大杉漣さん(64)だ。4月1日に公開される映画「蜜のあわれ」では二階堂ふみとダブル主演。役者としての矜持を思いっきり語ってもらった。
◇ ◇ ◇
僕は高橋伴明監督に誘われて、日活ロマンポルノで映画デビューしました。それまで舞台しか知りませんでしたから、映画がどのように撮影されていくのかまったくわからない。そのシステムも何もかも教えてくれたのが伴明さんでした。
初めての現場で「映画の世界っていうのはすごく深い世界だな」と思えたし、伴明さんの懐の深さやすごく男っぽい人柄に圧倒されました。
映画だけでなく、生きざまそのものが僕にとっては憧れというかすてきに思えましたね。
伴明さんには新宿ゴールデン街に飲みに連れていかれた。時間を忘れて朝までずっと映画の話をしている高橋監督を、隅っこからジーッとうかがっているだけで幸せな気分になれました。助監督が監督に付いて、成長していくのを目の当たりにできた時代。舞台しか知らなかった僕がそういう映画の世界で、もうひとつの居場所を得ることができてすごくうれしかった。