「サバイバルファミリー」が描く “電気なし生活”のリアル
やがて一家は電気と食料を求め、母光恵(深津絵里)の実家・鹿児島を自転車で目指す無謀な旅に出る。リアリティーを出すため、この旅程は監督らスタッフも事前に体験し、登場人物と同じように雑草を食べるなど、実際に「使える」生存術を脚本に反映させたというから力が入っている。
「漬物を漬けたり肉や柿を干すなど普段は時代遅れとバカにされがちな老人の知恵に救われる展開には、ハイテクやITが苦手な矢口監督らしい“古き良きもの”リスペクトな主張が感じられる。わずかな時短と利便性を求め湯水のように電気を使う生活で見失っていた本物の幸福というものに観客は一家とともに気づかされ、わけもわからず涙があふれてきます」(前出の前田氏)
もうすぐ7度目の「3・11」を迎えるが、震災の記憶がどんどん薄れる中、再びエネルギー浪費に慣れつつある都会人は必見のタイムリーな一本だ。