マラソン黄金期を牽引した双子ランナー宗兄弟の情熱と、合わせ鏡のような体感情報
今年の東京マラソンは、ゴール手前で見た。
「3時間」のペース周辺には外国人ランナーも多く、老若男女、ふざけた衣装と裏腹なひきつった顔など多彩な人間模様が続く。3時間も黙々と走れば、誰しも言葉にならないドラマを秘めるようだ。
ゴルフライターの夏坂健が「ゴルフには、する、見る、読むの3つの楽しみがある」と書いた。マラソンも同じで、その見方は変わってきた。以前は皆がランナーの顔を知っていた。寺沢徹、君原健二から宗兄弟、瀬古利彦、中山竹通、谷口浩美……。旭化成陸上部の宗猛・総監督が今年度での勇退を発表したが、“見るマラソン”の先駆けが宗兄弟だった。
1964年の東京五輪で円谷幸吉が念願のメダルを獲得。その熱が冷めた70年代後半、厚い眼鏡の双子という分かりやすい被写体が現れた。78年の別大マラソンで兄の茂が世界歴代2位の2時間9分5秒6、日本人初のサブテンを達成すると、対抗心を燃やしたのが早大競走部を率いる中村清だ。愛弟子の瀬古利彦が暮れの福岡で初優勝、続くモスクワ五輪の代表選考を兼ねた翌年の福岡ではトラック勝負で兄弟をごぼう抜きした。