「サバイバルファミリー」が描く “電気なし生活”のリアル
福島第1原発事故時の節電や計画停電以来「電気のない」薄暗い生活を多くの人が体験したが、それら大災害における教訓を再認識できる映画がいま話題になっている。
「スウィングガールズ」(04年)、「ハッピーフライト」(08年)などのヒット作で知られる矢口史靖監督最新作「サバイバルファミリー」(公開中)だ。
「ある朝、目覚めたらすべての電気製品が使えなくなっていた」現代日本の大都市におけるサバイバルを、何のとりえもない父親(小日向文世)率いる4人家族の視点から描く。ハリウッド映画のような災害スペクタクルなどはなく、原因不明なままいきなり「電気なし生活」に放り出される展開。電車もエレベーターも車さえも動かないのに、それでも通勤しようとする都会人の能天気さで笑わせるが、その独創的な発想を映画批評家の前田有一氏は高く評価する。
「食料の奪い合いも起きず、商店ではみな律義に行列に並ぶ。血眼になっているのは会社に遅刻しそうなお父さんたちだけと、治安の悪い海外の人が見たら腰を抜かしそうな、いかにも日本的な“終末ムービー”です。いまどき珍しいオリジナル脚本の企画というのもいい」