師匠が「ネタ全部忘れてええ」 桂吉弥さん初稽古の衝撃

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 そのころは携帯電話も持ってないですし、直後は大混乱で師匠に連絡するどころやない。電話を差し上げたのは1週間ほど経ってからです。そしたら開口一番、「生きてたんか。絶対死んだと思とった」……。まあ、師匠らしいですわ。

 それやこれやで結局、尼崎市の米朝師匠のご自宅にお伺いしたのは3月1日。兄弟子のあさ吉兄さんが先におりまして、2人で掃除、台所の手伝い、運転手にカバン持ち。その合間に兄さんと交互に、自転車で10分ほどの師匠の自宅で稽古つけてもらう。そんな生活が約3年ほど。その間、師匠には10作、丁寧に教えていただきました。

 最初の稽古の日は忘れません。「得意なネタなんや」と聞かれ、「道具屋」です、いうて演じたんです。そうしたら1分もせんうちに「わかったわかった。他に何できるん?」。てっきり褒めてもらえると思い込み、「つる」「隣の桜」……と挙げましたら、「それ、全部忘れてええ。俺が一から教えたる。忠実に覚えなさい」と。

 次から、て・に・を・は、に始まり、アクセントやイントネーションまでまさに“イロハのイ”からミッチリ、特訓ですわ。

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