「激動の1750日」日本海軍とヤクザ不思議な共通点
神岡組は「玉」を取られたが、それでも巻き返せたのはやはり代紋のおかげか。本家本元が強いのは現実の山口組VS神戸山口組の攻防を見れば分かる。
歴史的教訓に富んだストーリーだ。敵を暴力で叩き、大将首を狙うヤクザは戦国武将そのもの。若竹が川井に盾突いたことで後戻りできないと悟るのは、信長殺しを重臣に明かした明智光秀と同じ。吐いた唾はのめず、戦うしかない。
時津の暗殺は日本海軍の真珠湾攻撃を思わせる。海軍は奇襲作戦で優位に立とうとしたが、怒り心頭の米国民は本気で立ち向かってきた。神岡組も敵討ちの総力戦を挑み、八矢会を追い詰めていく。どちらも墓穴を掘ったことになる。
実際の山一抗争は死者29人を出して89年に終結した。多くの血が流れたが、降伏した一和会の山本広会長(本作では川井)は抗争後も生きて93年に病死。最高指揮官が生き延びたのもアジア太平洋戦争をなぞっている。戦国武将、軍隊、ヤクザと暴力装置の宿命は同じだ。人間は愚かなり!
(森田健司/日刊ゲンダイ)