俺が「オフィス北野」の専務になったいきさつ
60歳、還暦を迎えて、そろそろゆっくりと生活でも……と思っている矢先に、専務って……。そもそも俺、生まれてこの方、一度も就職したことがないのです。
アルバイトは若いころにいくつかしたけど、通勤とか、タイムカードとか、月給とか、ボーナスとか、一切無縁の芸能界一筋だから、経営の「け」の字も知らない、ほとんど中学1年生くらいのレベルの人間なのだ。
しかし、あの天下の北野武、我々が殿とあがめるたけしさんのご指名ならば、「ここでやらなきゃ男がすたる!」、そして、たけしさんの独立後に、事務所を去ったタレントもいたが、それでも残ってくれた30人ほどのタレントを放り出すわけにはいかない!! ということで、枝豆社長と額に脂汗、眉間にシワ寄せ、二人三脚で日夜、超微力の奮闘を繰り広げているのです(協力してくれているスタッフや関係者の皆さまに、この場を借りて感謝申し上げます)。
とにかく、すべてが俺にとっては未知の世界であった。例えば、名刺の出し方ひとつ分からなかったどころか、名刺を入れる名刺入れの存在さえ知らなかったのである。