「火事だアー!!」ニュースにもなった俺の泥棒逮捕劇秘話
凶器がない安心感が急に俺に勇気を与えたのだろう。まあ、捕まえることは無理にせよ、犯人の特徴くらいは目に焼き付けておこう! と追撃を始めたのだった。その差十数メートルくらいだったろうか……。その差からおそらく逃げ切られるだろうと思ったのだが、次の犯人の行動が思わぬ展開を呼んだのだった。
泥棒は犯行に至る前に道を挟んだマンションの陰に自転車を隠していたのだ。おそらく逃走用であったのだろう……その自転車に乗って逃げようとして、動きが遅くなったその時、俺は自転車の後ろの荷台に飛び付き、倒れた犯人の上に覆いかぶさっていたのだ!
さあ、そこからが修羅場の始まりだった。「ドロボー! ドロボー!!」と町内に響きわたる絶叫を上げたにもかかわらず、一人として外に出てくる者の姿はない……。そーか、以前聞いたことがあるぞ……泥棒だと自らも危険な目に遭いかねないので、なかなか出にくい……そして、火事と叫ぶと自分にも被害が及ぶ可能性があるので、集まってくるという話を。
「火事だアー!!」。これが見事に的中してパジャマ姿の町内の人が寝ぼけ眼でゾロゾロと姿を現す。これでもう一安心とタカをくくった俺は気持ちに余裕ができたので、イソップ童話の「オオカミ少年」のごとく「オオカミだ!! オオカミが出たぞー!!」と悪乗りまで始める始末……。