「相棒と親方の家で寝泊まりを…稽古は雨の日以外は外で」
親方の指導は厳しかったのか。
「厳しくはなかったですね。うるさいことは言わないけど、見てないようで見られている怖さはありました。稽古をサボって仙之助と野球をしてたのを見つかって、『何やってんだ、バカヤロー』と、怒鳴られたのはこれ一度きりです」
初高座は入門して1年半後の1957年2月。鏡味盛之助という芸名で、小仙と相棒の小金、3人で池袋演芸場に出演した。
「前座さんがお茶を入れてくれました。まだ小学生ですから、遠慮せずにいただいたんですが、その前座が2009年に亡くなった先代三遊亭円楽師匠でした」
それからは親方にくっついて、いろいろな場所で芸を演じる日々が続く。(つづく)
(聞き手・吉川潮)
▽鏡味仙三郎(かがみ・せんざぶろう)1946年、岩手県盛岡市出身。55年に12代目家元・鏡味小仙に入門。前座名「盛之助」。57年、池袋演芸場で初舞台。73年に故・鏡味仙之助とコンビ結成。2002年、鏡味仙三郎社中を結成。趣味はゴルフとオートレース。近著に「太神楽 寄席とともに歩む日本の芸能の原点」(原書房)がある。