秋元順子さん58歳デビューから「愛のままで…」ヒットまで
秋元順子「愛のままで…」
父は謡、浪曲、母は民謡が趣味で、いつも和の音が流れている家庭で育ちました。私が中学2年生の頃、目覚めたのは洋楽でした。深夜のラジオ「FEN」から流れてくるナット・キング・コールやフランク・シナトラの曲。なんてすてきなのでしょうと。とくにナット・キング・コールの「プリテンド」はレコードを持っている友人から借りて、それこそ擦り切れるほど聴いて覚えました。
進学した女子高では音楽班に入部し、文化祭ではオペレッタをさせていただき、先生のご指導の下、演出、衣装担当、劇中では男役の悪役も楽しみました。卒業後は音大に行く予定でしたが、家庭の事情で働くことになりました。進学は諦めましたが、音楽も諦めたわけではありません。石油会社に入社し、ハワイアンバンドの同好会に入会。得意先のイベントや社内、優秀スタンド表彰式など、大きなパーティーのBGMとして歌わせていただきました。
24歳で生花店経営者と結婚することになり、店舗も増え、従業員のことや仕事、子育てと大忙しの時代でした。40歳を前にある日のこと。ハワイアンの仲間から食事会の誘いがあり、出掛けました。それは新メンバーを加えて再結成の日でした。「ぜひ君にも参加してほしい」と……。でも、物理的に無理ですとお断りしたのですが、「じゃぁ、一曲だけ」ということになり、「南国の夜」を歌ったのです。すると、「声が出るじゃない!」と言われ、私の血が騒いでしまいました。参加するしかない(!)と。