大ヒット韓国ドラマ「愛の不時着」を楽しむ7つの“裏ネタ”
Netflixで配信中の韓国ドラマ「愛の不時着」が空前のブームとなっている。女性ファンが多かったドラマ「冬のソナタ」とは異なり、SNSには男性からも「感動した」という書き込みが相次いでいる。
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韓国ドラマのケーブルテレビtvNで昨年12月から今年2月まで16話にわたって放送された「愛の不時着」。韓国内の最高視聴率は21.7%で、同局の歴代最高を記録。その後、2月下旬にNetflixで世界190カ国に配信され、まず米国で人気沸騰、日本でもブームを巻き起こしている。
ストーリーは、韓国の財閥令嬢ユン・セリ(ソン・イェジン)がパラグライダー中のアクシデントによって北朝鮮に不時着することから始まる。北朝鮮の裕福な家で育ったエリート将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)に助けてもらう。セリは北朝鮮で素性を隠しながら生活し、韓国に戻る方法を探すなかでジョンヒョクの誠実さに思いを寄せ始める。これまで韓国にとって“タブー”と思われてきた北朝鮮住民の下層生活も表現しているのは新鮮だ。また、結ばれることが許されない南北の恋愛は、昔の純愛作品のようなもどかしさで引きつけられる。今回は、韓国事情に詳しい専門家に見どころを聞いてみた。
■面白さ その1「文政権のプロパガンダ」
舞台を北にしたのは文在寅大統領自身の故郷が北朝鮮(両親が脱北)ということもあるといわれる。2014年には文大統領の故郷・釜山を舞台にした「国際市場で逢いましょう」という朝鮮戦争を描いた映画もヒットした。
「今回の作品も韓国政府傘下の文化観光部の資金支援があった。左派政権の文大統領の肝いりで、北を舞台にしたドラマで韓国民にも北の実態に親しんでもらおうという意図もあった」(国際ジャーナリストの太刀川正樹氏)
文大統領は、18年4月に北朝鮮の金正恩委員長と板門店の韓国側施設「平和の家」で11年ぶりの南北首脳会談を実施している。現在は進展がないが、この時の融和ムードの波に乗って制作されたといわれている。
■面白さ その2「北の電力不足をリアルに描く」
「韓国のテレビ局では脱北者を呼んでトークする番組もあり、よく生活実態を語ります。シナリオ作家が脱北者から実情を聞き、それをベースにドラマを作っているので、リアリティーがあるのです。劇中、分断しているはずの北の市場に行くと、韓国の化粧品が売られていたりする。また、主人公の2人が電車に乗って移動するシーンは、電力不足で時速20キロとか30キロのノロノロ運転。途中で止まって外で動きだすのを待ったりと、北の電力事情などもリアルに表しています。本作中には、キムチウム(地下に掘った天然冷蔵庫)やノルガジ(脱走兵)というような北朝鮮独特の言葉がたびたび出てきます」(韓国ドラマに詳しい翻訳者の成田順美氏)
第3話では北朝鮮の田舎のおばさんたちが登場する。韓国人も知らない方言が出てくるという細部までのこだわりだ。
■面白さ その3「韓国版ロミオとジュリエットのバタくささ」
財閥女性と北朝鮮の軍人の恋愛。2人の間には軍の陰謀や家族、軍事境界線という障壁がある。
「お金持ちと貧乏人という設定は韓国ドラマではよくありますが、さすがに本作の設定は突拍子もない。当然、南北の恋愛は悲恋となるわけですが、これが“韓国版ロミオとジュリエット”と呼ばれ、ウケています」(韓流ライターの児玉愛子氏)
■面白さ その4「実生活でも恋人同士!?」
セリを演じる、ソン・イェジンは1982年生まれ。ヒロイン役をつとめた映画「私の頭の中の消しゴム」(2004年)は日本でも大ヒットしたから、見覚えのある人も多いだろう。
一方、ジョンヒョクを演じるヒョンビンは端正なルックスで、女性支持は高い。韓国で最高視聴率50.5%を記録したドラマ「私の名前はキム・サンスン」(05年)で大ブレークした。
「ヒョンビンは人気絶頂の11年に海兵隊教育訓練団に入隊し、約2年間兵役をつとめています。兵役逃れをしたがる芸能人が少なくない中、ヒョンビンは一番キツいといわれる海兵隊に自ら志願しました。そんな“本格派”だから、北朝鮮の兵士役も様になっている。日本でも彼のファンミーティングには多くの女性が集まります」(児玉愛子氏)
この2人は「ザ・ネゴシエーション」(18年)などで共演歴もあり、男女の関係も噂される。
「これまで2人は何度も交際説が上がっていました。昨年春にキャスティングが発表された時も、韓国では話題になりましたね。本人たちは否定しているものの、視聴したファンは『演技か本気か?』と、これまたドラマにリアリティーさを感じているのです」(児玉愛子氏)
■面白さ その5「ロケ地のピネ島は大人気」
ドラマの冒頭でパラグライダーが飛び立つシーンを撮ったのは、実は軍事境界線付近ではなく、ソウルから高速バスで2時間半のところにある「ピョルマロ天文台」だ。ドラマが進行し、セリが親しくなった北朝鮮の仲間と涙のお別れをする感動のシーンは、家族連れでにぎわう忠州市のピネソン(ピネ島)で撮影されている。
「撮影のために殺風景に整備していましたが、今では葦が生い茂っています。ロケ地として、より注目されています」(太刀川正樹氏)
■面白さ その6「冬ソナのチェ・ジウが友情出演」
第1次韓流ドラマブームを起こした「冬ソナ」のヒロインも登場する。
「第13話では、チェ・ジウが特別出演しています。ジョンヒョクの部下の一人が南に潜伏した時に、セリの友達であるという設定のチェ・ジウに会うシーンは見どころです」(成田順美氏)
最近、ママになった45歳のチェ・ジウが見られる。
「2話以降には映画『パラサイト』の重要キャストのパク・ミョンフンと母親役のチャン・へジンが姉弟役で登場します。探しても面白いですよ」(児玉愛子氏)
■面白さ その7「コロナ自粛が大成功に“着地”させた」
ネットフリックスでの配信は、世界中がコロナで外出を控えていた時期と重なる。
ロケ地が韓国や北朝鮮、ヨーロッパなど多岐にわたり、頭を空っぽにできる荒唐無稽なストーリーだったのもよかったという。
「Netflixで配信されてから、韓流ドラマに再び興味を持ったという声は聞きますね。『愛の不時着』を見た後に、同じく配信中の『梨泰院クラス』が視聴上位に上がっていて、こちらもブームの予感です」(児玉愛子氏)
黒柳徹子や佐々木希、ラグビー日本代表の松島幸太朗選手も「愛の不時着」に胸をキュンキュンさせているという。