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原田曜平マーケティングアナリスト・信州大学特任教授

1977年、東京都生まれ。マーケティングアナリスト。慶大商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーなどを経て、独立。2003年度JAAA広告賞・新人部門賞受賞。「マイルドヤンキー」「さとり世代」「女子力男子」など若者消費を象徴するキーワードを広めた若者研究の第一人者。「若者わからん!」「Z世代」など著書多数。20年12月から信州大特任教授。

内田恭子さんが振り返るフジテレビ時代「生き急いでいた」

公開日: 更新日:

テレビ業界が変革期だからこそ個々の力がより重要に

 内田恭子さんとの対談の後半は仕事と育児の両立、世代論、そしてなにかと元気のない古巣のテレビ界へのエールを訊く!

 ◇  ◇  ◇

原田「06年にフジテレビを退社、結婚、出産。現在は子育てと仕事の両立中です」

内田「大変なことは大変ですけど、楽しんでやってます。子どもは小2と小4の男の子。2人ともママっ子ですが、親離れするまではこの貴重な時間を大切にしたいです。夫も仕事が忙しいので、基本はいないものとして(笑い)。でも、すごく協力的です」

原田「これからのビジョンは?」

内田「私は流れのままに生きているので、特に明確な野望などはないのですが、仕事は続けていきたい。英語を生かして海外を巡る仕事とかやってみたいとは思いますが、今の状況で受けられる仕事をきちんとやっていければいいなと」

原田「40代半ばの我々はちょうどはざまの世代だと思うんですよね。専業主婦に憧れる人もいる一方で、ずっと第一線で働いていたいと思う女性もいる。我々より下の世代は自分で働くのが当たり前で、男に食わせてもらおうと思っている女性はあまりいないかもしれませんが……」

内田「私の母はずっと専業主婦で、商社勤務の父の転勤について回って、外国を渡り歩いていましたけど、それが彼女の幸せだったんですよね」

原田「駐妻(夫の海外駐在に帯同する駐在妻)って大変では?」

内田「いえいえ、母は楽しそうでしたよ。行く先々で人生をエンジョイしていました。私がテレビ局に入ると伝えたら、母は大反対。親からしたら、テレビ局は激務のイメージはあるし、よくわからない世界。親族がテレビ局で働いているわけでもないし想像もつかなかったと思います」

原田「それはたしかに」

内田「母には“あなたには私みたいに商社の人と結婚して、いろいろな海外に行って人生の楽しみを味わってほしかった”と言われました。私も私でフジテレビに入ったときに“ここで一生働くぞ!”という気概があったわけでもなかったんですけどね(笑い)。でも、自分が結婚して母になり、普段の生活では夫の姓を名乗っていますが、自分が内田恭子のままでいられるのは、仕事をしているときだけ。仕事は私にとって、ある意味息抜きができることで、母でも妻でもない時間なので、やはり続けていきたいとは思っています。東日本大震災後からずっと、友達と読み聞かせのボランティアをやっているのでその活動も広げたいです」

原田「内田さんが働いていた時代の民放テレビは景気が良くて黄金時代でした。なかでも最強はフジテレビ。それが2011年ごろからテレビ業界は全体的に業績が厳しくなっています」

内田「悲しいです」

原田「フジテレビに限りませんが、残念ながら今の若者世代にテレビ局は当時程は人気企業とは言えなくなっています。内定辞退者も出る程。若者のテレビ離れは深刻です」

■フジが元気でないと…

内田「今の若者にはどんな企業が人気なんですか?」

原田「安定志向は強いので、大企業に行きたいのは大前提なのですが、転勤がなくて、ワークライフバランスが保たれている仕事に就きたい子が増えている気がします。総合商社はまだ人気を保っていますが、人気に陰りが出始める可能性がありますし、かつて人気だった大手新聞社やNHKなどは全国転勤があるので不人気です。お金を稼ぎたい、モテたい、出世したいという欲がなくて、親のそばに住んで、プライベートな時間も充実させるのが大切という若者は増えています」

内田「言葉がないですね」

原田「元気のないテレビ業界にエールはいかがですか?」

内田「私が大学3年生の時にアナウンサー一日体験でフジテレビに初めて行ったとき、働いている人たちがものすごく楽しそうだったのが印象的でした。みんなが楽しく働いている職場で私も働きたいと心から思ったので、今の話を聞いて、少しショックですね。でも、フジテレビのいいところは、個々を見て、大切にしてくれるところ。強制されることがない会社です。アナウンサーにしても、制作陣にしてもその人らしさを大事にしてくれる。テレビ業界が変革期だからこそ、これから個々の力はより重要になっていくと思うのですが」

原田「テレビ局全体のキーは、局を超えてネット視聴にどれだけ本気になれるか。局ごとにそれぞれ違う施策をやっても、受像機でまとめて見られていた状況より劣ったものになってしまいますし、TVerなど「見逃し配信」というあくまで受像機にこだわるスタンスでは「受像機離れ」したスマホ依存の若者たちは掴めないと思います」

(構成=高田晶子)

▽うちだ・きょうこ 1976年、ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。慶大卒業後の99年にフジテレビ入社。同期は大橋マキと長谷川豊。局アナ時代は「すぽると!」や「笑っていいとも!」など数多くの人気番組に出演する看板アナウンサーとして活躍。2006年3月末でフジテレビを退社してフリーに。現在は司会、ナレーターのほか、自身が親善大使を務める「オーストリア・ロースドルフ城 古伊万里再生プロジェクト」の特別展が大倉集古館で開催中。

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