「おじ猫」涙のワケは草刈正雄の含みと余白を持たせた演技
■「かわいいねえ」の一言に凝縮された感情
「おじさまと猫」の原作は漫画で、ドラマ制作が発表された時点ですでに作品自体のファンが多くいた。筆者もコミック発売当初からのファンで、主演が草刈だと聞いた時はイメージが湧かなかったが、第1話でふくまるを抱きしめ「かわいいねえ」と言うシーンを見た時、神田冬樹を草刈が演じる必然性を感じた。
「かわいいねえ」というたったその一言に、神田が感じてきた孤独や、大切な人と出会ってきた喜びと幸せ、そして別れを経験してきたのだろうという、さまざまな“含み”が凝縮されていた。
昨年の連続ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」(TBS系)でも草刈の“含み”をもたせた演技は発揮されていた。草刈は故・三浦春馬演じる猿渡慶太の父親役を演じ、最終回でヒロイン役の松岡茉優(26)に向かって言った「あの子は君が好きなんだよ」という言葉が印象的だった。一見、何げない一言だが、姿を消した慶太に思いを馳せるシーンだったということもあり、草刈の言葉はとても切なく、重さと深さを含んでいた。
“余白”を含ませた草刈の演技はもはや単なる“イケおじ枠”にとどまらない。 =敬称略