NHK Eテレのアニメ「不滅のあなたへ」が描く哲学的な世界観とは
一言では形容しがたい世界観から織りなされる、哲学的な物語。まるで手塚治虫の「火の鳥」のようなジュブナイル作品という印象を受けるが、作者の大今氏は本作を「子どものころに描きたいと思っていた物語が基になっているお話だ」と連載開始時に語っていた。
序盤の球体こと“フシ”は、まさに見るもの聞くもの触れるもの全てが“刺激”という情報として蓄積され、そこから学んでいく赤子のようである。
だからこそ、この作品には“脇役”という概念がないように感じる。もちろん、ストーリーでフォーカスされるのは“フシ”だが、フシが関わり、彼らの刺激となる人々はフシとこの世界を構築するための重要な要素で、いい意味で横並びだ。視聴者や読者は、作中に登場する観察者同様、彼らの世界をのぞいている感覚で物語に触れることができる。
登場人物にシンクロできることで得られるものや感じられるものもあるが、本作に関していうと“客観的”に俯瞰して物語を見せてもらえることで、得られるものがあると感じる。
いい意味でも悪い意味でも無垢で、人知を逸脱した存在である“フシ”がいることによって、人間という存在のはかなさ、愚かさ、悲しさ、いとしさ、優しさがより際立って見えてくるのだ。