五木ひろしの光と影<12>山口洋子からの突然の電話「三谷謙君の曲を一緒に作らない?」
「あなたはプロだと聞きましたが、どこの会社ですか」
「はい、ミノルフォンです」
「お名前は?」
「三谷謙といいます」
「そう、頑張ってね」
文字に起こすと、すげないやりとりでしかないが、その際、三谷謙は一枚のメモ書きを山口洋子に手渡したという。
「このときに五木君(三谷謙)は僕の自宅の電話番号の紙を洋子ちゃんに渡したみたいなんだ」(平尾昌晃)
とすれば、おそらく彼は「山口先生と平尾先生で僕の曲を作ってほしいんです」とでも言ったのだろう。
数日後のことである。夜遅くに平尾の自宅の電話が鳴った。「こんな時間に誰だ?」と受話器を取ると、山口洋子からだった。
「遅くにごめんね」
「どうしたの?」
「うん、ちょっとね」
平尾は不思議に思った。山口洋子に電話番号を教えた覚えがなかったからだ。すると彼女は意外なことを口にした。
「ねえ、三谷謙君って知ってるでしょ。彼の曲を一緒に作らない?」(つづく)