コロナ禍2021年の歌舞伎座は「猿之助・仁左衛門・玉三郎」の時代だった
坂東玉三郎と若手の「信濃路紅葉鬼揃」は能の「紅葉狩」を題材にしたもので、前半は能のような扮装で、能のように舞う。どこかがゆるめば退屈の極みとなりそうだが、舞台は異常なまでの緊張感で、観客も集中して舞台を凝視し、針が落ちる音が聞こえるというたとえそのものの劇場空間になった。
第二部は中村勘九郎と尾上右近の「男女道成寺」と、尾上菊之助と勘九郎の「ぢいさんばあさん」だが、未見。
12月なので1年を振り返れば、歌舞伎座に限れば、猿之助と仁左衛門・玉三郎の年だった。2時間ずつ・三部制という制約を受けて「その条件でできるものを見せよう」と消極的にならず、「この機会に普段やれないものをやってみよう」「2時間でしかやれないものを作ってみよう」と積極的に出た。そこにあるのは、「この非常時にわざわざ歌舞伎座へ来てくれる観客」へのまなざしだ。ファンもそれに応えて、席を埋めた。
一方、コロナ禍以降、歌舞伎座からひたすらと遠ざかるのが海老蔵だ。7月に出ただけだし、それも五輪の関係か、月の前半だけだった。といって、海老蔵は遊んでいるわけではない。歌舞伎座には出ないが、自主公演で全国をまわっている。