コロナ禍2021年の歌舞伎座は「猿之助・仁左衛門・玉三郎」の時代だった
12月も市川猿之助が大奮闘。先代猿之助が「伽羅先代萩」を大胆に作り変え、当たり役とした「伊達の十役」を「新版」と銘打っての改作というか、事実上の新作だ。
前半は従来の「伊達の十役」の見せ場である「御殿」「床下」で、猿之助は女形の大役、政岡を演じた。いずれ「伽羅先代萩」を歌舞伎座で演じるときの下準備の意味もあるのだろう。後半はまったくの新作部分で、猿之助が八役を早替り(前半の二役と合わせて「十役」)。
休憩を入れて2時間なので、全体のテンポは早い。しっかりじっくりやるところは、じっくりやる。このご時世に歌舞伎座まで来る人は、大元の「先代萩」を知っているだろうという前提で飛ばしていくが、何も知らなくても、見ているだけで楽しいようにも作られている。非常時での歌舞伎はいつもと同じではいけないという気概が、今回もみなぎる。
第三部は中村七之助・尾上松緑の「吉野山」と、玉三郎の「信濃路紅葉鬼揃」。2本とも舞踊劇というのはどうかと思うが、それぞれ見ごたえがあった。
「吉野山」は清元がなく、竹本のみ、逸見藤太も出てこず、振り付けや衣装も、いつもの「吉野山」とは異なる。玉三郎の助言でそうしたという。省略・簡略化のおかげで、凝縮された。