「hana -1970、コザが燃えた-」松山ケンイチが沖縄の怒りと苦悩を体現
店の中では戦災孤児だったハルオとアキオ、彼らを引き取ったおかあ、そしてある事件で死んだ妹ナナコ(上原千果)──血のつながらない家族の対立・葛藤があり、店の外では沖縄にとって歴史的な事件が起ころうとしていた……。
マブイ(霊魂)との交歓など、沖縄の死生観に根ざしたミステリアスな仕掛けもあり、薄皮をはぐように謎が少しずつ明らかになっていく展開はスリリング。
モチーフとなっている「コザ騒動」は米兵の車が住民をはねた事故が発端だった。しかし、それまでも、米軍人・軍属による事件は毎年1000件を超え、米軍支配への鬱積していた沖縄の怒りに火がついたのがコザ騒動だ。略奪行為は一件もなく、「民衆蜂起」だったともいえる。
「ヤマトゥ(本土)では戦争が終わったんですか。戦争が終わったと思っているウチナーンチュ(沖縄人)は一人もいないと思いますよ」
無邪気に「戦争を知らない子供たち」を歌う鈴木に向かって皮肉交じりにおかあが言うセリフがこの芝居の要諦といえる。
松山ケンイチが怒りと悲しみを静かに秘めた陰影のある演技で舞台を引き締めた。たくましさの中に艶めいた余貴美子の演技も余韻を残す。