元ちとせ語る「平和や人々の幸せを歌う自分でありたい」デビュー20周年、決意新たに
メジャーデビュー20周年を迎えた元ちとせが、アルバム「虹の麓」をリリースした。坂本慎太郎、折坂悠太、長澤知之、さかいゆうなど、曲ごとにプロデューサーを迎えた最新の音。その一方、奄美大島のシマ唄で育った元の歌や三味線は、いまなおプリミティブ。両者が見事なバランスで共存している。
「(さかい)ゆう君プロデュースの『KAMA KULA』は、彼が愛するR&Bのテイストで、デジタルを駆使したサウンドに私の声と三味線が加わり、ほかにはない音楽に仕上がりました。うまくいった理由のひとつには、ゆう君は高知県の土佐清水、私は奄美と2人とも海と緑の中で生まれ育ち、体のなかに自然によって育まれたリズムがあるからかもしれません」
制作はコロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻が始まった時期と重なる。
「だからといって、声大きく戦争反対するような曲を歌うということではなく、例えば『虹の麓』では断絶を乗り越えた先で、世界が再び手を取り合えるようにという願い、『暁の鐘』ではその歴史の上にある今を生きていくことを歌っています。三味線で歌った曲『ヨイスラ節』は、当たり前だと思っていた日常が失われた今、かつて私たちが命のリスクを感じることなく暮らせていたありがたさを込め歌っています」
デビューから20年、元は一歩一歩ミュージシャンシップを高めてきた。
「1998年に19歳で奄美から東京に来たときにはシンガーという自覚はなく、ただ楽しくてしかたがありませんでした。銀座のCDストアでバイトをして、事務所の先輩、杏子さんのお手伝いをしたり、山崎まさよしさんのツアーについていったり。歌い手としての自分が芽生えたのは、オーガスタキャンプ(所属事務所、オフィスオーガスタ所属アーティストが総出演する音楽イベント)で、生まれて初めて大観衆の前で歌ったときです」