ピンク・レディーが駆けた4年7カ月 稼いだ500億円は闇へ、衝撃の紅白辞退、全米進出の賭け

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「天国と地獄」の始まりになった紅白辞退

 人気絶頂から、わずか4年7カ月で解散したピンク・レディー。舞台裏で一体何が起きていたのか。

「スター誕生!」で見いだされたピンク・レディーのデビュー曲は1976年8月の「ペッパー警部」。当初オリコンチャート100位にも入らなかったが、超ミニでガニ股になる斬新な踊りで「新宿音楽祭」を境に人気に火がつく。11月発売の第2弾「S・O・S」は一気にチャート1位。と同時に「ペッパー警部」も3位まで上昇し、2人はテレビの音楽番組を独占していく。

 売り上げベスト5を挙げると①「UFO」(156万枚)②「サウスポー」(146万枚)③「ウォンテッド」(120万枚)④「モンスター」(110万枚)⑤「渚のシンドバッド」(100万枚)。2人が稼ぎ出したのは500億円ともいわれた。

 初任給は5万円。それが80年ごろには月給350万円に。所属事務所「T&C」の社長だった貫泰夫は「20歳の娘に350万円の月給を出し、5000万円のマンションを買い与えた」と語っている。

 それでも莫大な金額が残って当然だが、事務所は経営難に陥る。お金はどこへ消えたのか。

 ピンク・レディーは78年に「UFO」で「日本レコード大賞」を受賞する。この年に争ったのは山口百恵沢田研二らそうそうたるメンバー。その中でも、日本中を席巻していたピンク・レディーが受賞するのは自然ではあったが、当時、レコ大は審査員への過剰接待が公然の秘密。

 事務所社長の貫は「ゴルフに誘い、酒の好きな審査員は銀座のクラブなどに招待」と語り、さらにロスで仕事のピンク・レディーの取材旅行と称して、関係者7人をアメリカに連れていった。それは一端にすぎず、やはり賞取りや人気維持のためにお金をジャブジャブ使っていたようだ。

 事務所専務で音楽プロデューサーの相馬一比古は「儲けた分はプロモートで還元しちゃいました」と語っている。本当にそれだけだったのかは不明、今となっては真相はわからない。

■紅白辞退で大きな批判を浴び人気に陰りが…

 ピンク・レディーにとっての大きな転機はその年の暮れ。レコ大を受賞した歌手は直後にNHKの「紅白歌合戦」出場のため渋谷に移動するのが普通だ。ところが2人は11月に紅白出場辞退の会見を開き、レコ大受賞後は新宿・コマ劇場に移動した。日本テレビの特番に出演するためだった。

 この紅白軽視の選択が大きな批判を浴び、人気に陰りが出る始まりとなる。つまり78年12月31日、ピンク・レディーは天国と地獄を味わったのだ。

 12年前、日刊ゲンダイがピンク・レディーを連載した際、本人たちは紅白を辞退したことについてほとんど語っていない。それくらい今も後悔する出来事だったのではないか。

 なぜ紅白辞退の選択をしたのか? 社長の貫は「事情が違うが、美空ひばりだって出場しなかったじゃないですか……NHKのレコード産業に対する考え方が嫌いでね……パッと民放でやれって」と月刊誌で吐露した。

 新興の怖いもの知らずの事務所が、高慢なNHKに盾突いて、金になる民放を選んだという構図だろうか。

 事務所の賭けはそれだけではなかった。翌年には全米進出という野望に挑戦する。一定の成果はあったし、ケイが「アメリカンドリームってこういうことなんだ」と喜んだが、日本国内では思うほど話題にならず、2人はただ疲弊していく。そこにケイの恋愛が重なる。

「相手が同じ仕事をしている人だったこともあって事務所から驚くほど圧力がかかってきました……NBCの仕事が終わる頃でしょうか。精神的にもボロボロになって、もう限界でした」

 こうして、81年3月31日、後楽園球場での解散コンサートへと向かうのである。

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