映画「TOCKA」で自殺ほう助するヒロイン役 菜葉菜「存在自体は否定したくない」
「成長した姿を見せたい」
約17年ぶりにメガホンを取った鎌田義孝監督は寡黙なタイプで、現場では積極的に役者に説明・指示するタイプではなかったそうだが、彼女自身はこの難役を前にしても不安はなかったという。
「監督の前作『YUMENO ユメノ』(05年)は、私が初めて主演した映画なんです。そのときから鎌田監督の世界観は確固として変わっていないな、って感じました。当時はデビューしたばかりで右も左もわからなくて必死だったから、今度は成長した姿を見せたいっ! って思いましたね」
初主演映画の監督から久々に呼ばれたとなれば当然、感動の再会劇があったのではないか。
「役が決まったときはすごくうれしかったです。ずっと信頼してくれてたのかなって。でも監督、せっかく会っても“成長したね”とか全然言ってくれない……。でも、いいんです。監督、口下手なんで(笑)、心の中で思ってもらえればいいな、と思って頑張りました」
映画は北海道ロケによるロードムービーの要素も魅力だが、フィルムや機材が不調になるほど厳寒の気候の中、車ごと海に突っ込むアクションシーンも自ら演じた。女優として、そんな過酷な撮影や演出をどうとらえているのだろうか。
「リハーサルを都内の海でやって、本番は一発勝負で挑みました。北海道の海は、むしろ水から出た後がめちゃ寒くて。沈む車からの脱出は恐怖心もあったけど、これも初体験! と今思うと結構楽しんでやってました。私は厳しい演出とかも全然アリだと思ってて。例えば、テイクを何十回と重ねるような現場でも、そこまで粘って撮ってくれるなんて愛だわ、って感じるタイプなんです。女優としてはM気質なんですかね。自分じゃSだと思ってたんですけど(笑)。とにかく今は一つ一つ丁寧に、年齢を重ねても魅力的な、息の長い役者になりたいです」
(聞き手=映画批評家・前田有一)