米アカデミー賞7冠「エブエブ」の衝撃! ハリウッドにおける「アジア系映画時代」の到来
マルチバースを猛烈な速度で行き交い、クンフーなど他宇宙での特殊能力を身につけて戦うという荒唐無稽なSF喜劇の物語性を支えるのは「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」や「グリーン・デスティニー」のアクションで名を上げ、「クレイジー・リッチ!」で熟練の演技を見せたミシェル・ヨーの存在感だ。静かな熱量にあふれる彼女の演技は主演女優賞にふさわしい。
人生の分岐点を振り返り「あの時にああしていたら別の人生になっていた」と後悔し、あるいは想像や感慨にふける。これは古今東西「人の常」で、今に始まる話ではない。
しかし現代ではそれに加え、インターネットの発達によって「仮想現実化」が進展し、例えばSNSの裏アカウントで本音を呟き、実際以上に盛った「リア充」写真を投稿し悦に入ったりもする。そうしたアイデンティティー(自己同一性)の多元化は、人に自由な選択肢をもたらすように見えて、実は「全てがどうでもいい」(Nothing matters)という虚無の闇をもたらしかねない。
■仮想化された現代における「家族の愛」