映画評論家・白井佳夫さんは90歳「映画は数ある娯楽のひとつに。むしろ正しい位置でしょう」
「私には自信がありましたね。私は誰よりも映画が好きだから、私が面白いと思ったものは読者も面白いと思うに違いない、と確信して、そこから新しい時代の評論家も育っていきましたよ」
76~78年は「日本映画名作劇場」(東京12チャンネル=現・テレビ東京)の解説を務めた。
「番組開始前に、ニコニコ笑わず、褒めるばかりはしたくない、などと放送に条件を付けました。多少モメましたが、結局、私の思うようにしてくれて高視聴率がとれ、社長表彰されました。この番組で日本映画を好きになった、という方もいて誇らしく思っています」
87年からは、43年に製作・公開された「無法松の一生」の戦前戦後の検閲シーンを復元する集会を国内外で開催してきた。
「検閲とはどういうものか、万人に知ってもらいたくて100回近くやってきました。さすがに高齢の今は中断していますが、カット部分の復活朗読劇に協力してきてくれた娘(女優・白井真木)が活動を引き継いでくれるかな、と思っています」
白井さんは29歳のとき、6歳年下の早稲田大学映画研究会の後輩と結婚。1男1女をもうけた。孫はおらず、白井さんは現在、夫婦2人暮らし。2004年、文化庁映画賞を受賞。
「湯布院映画祭など映画祭の仕掛け人もやりました。山あり谷ありの評論家人生でしたが、何とか乗り切って、とてもいい人生だったかな、と思いますね」
(取材・文=中野裕子)