NHK「クロ現」ジャニーズ性加害特集は消化不良…欠けていた2つの視点、民放トップへの取材
“ジャニーズタブー”が醸成された時のフジのトップは日枝久氏
前出の元キー局関係者が話す。
「99年の『週刊文春』の特集ですから、90年代後半にメリー氏が《ドラマの共演者が気に入らないと、その放送局の社長に直接電話をかけ、外すよう要求》している。その頃の社長がメリー氏の圧力を受け入れ、上層部が現場に指令を下したから、吉野氏の言う“ジャニーズタブー”が醸成された。当時のフジテレビ社長は誰か。現在もフジサンケイグループの代表を務める日枝久氏(85)ですよ」
日枝氏は88年、社長に就任。80年代前半からのフジテレビ黄金時代を継続させ、90年代にはトレンディドラマ路線で局のイメージをアップさせていった。その一翼を担ったのが木村拓哉(50)などジャニーズ事務所のタレントだった。
「『ロングバケーション』(96年)、『ラブジェネレーション』(97年)などが視聴率30%を取りましたからね。メリー氏はフジ以外の民放にも電話をかけていたと思いますが、一番圧力をかけやすいのはフジだったと考えるのが妥当です。1990年代後半、最も視聴率を取れる木村の主演ドラマはフジに集中していましたから。その当時、他局での連続ドラマはTBSの『協奏曲』くらいです」
SMAPのなかで木村拓哉や稲垣吾郎(49)はドラマを中心に活躍したが、中居正広(51)や香取慎吾(46)、草彅剛(49)はバラエティにも進出。中居は情報番組でキャスターも務めた。これによって、メリー氏がますます圧力をかけやすい状態が生まれた。
「それまでのジャニーズのアイドルはあくまで歌が中心だったので、メリー氏の圧力が及ばない面もあった。実際、ワイドショーでは近藤真彦などの恋愛ネタを取り上げていました。でも、SMAPの後にデビューしたTOKIO、V6、嵐などがSMAPと同じようにテレビ局のあらゆる番組に進出した。そのため、ワイドショーでもジャニーズにマイナスな話題は扱わなくなりました。それがまさに1990年代半ば以降です。だから、『クローズアップ現代』は当時の民放の社長クラスを取材すべきでした。チャレンジしたものの、実現できなかったのかもしれませんが、せめて『メリー氏の圧力』に注目した番組作りをしてほしかった。でも、これからに期待したい。ジャニーズ問題は、何度も特集すべき価値がある」(前出の元キー局関係者)
第一歩を踏み出したNHK。さらなるジャニーズ検証番組の制作が求められる。