じつにカッコいい。人生の成功者・島田雅彦さんのいるところ、何かが起こる。
前置きが長くなった。島田雅彦さんの話をしたい。現在63歳。人気小説家にして法政大学教授、芥川賞選考委員、紫綬褒章受章者。誰もが認めるこの国の文芸界の要人である。最新の長編小説となる一昨年の『パンとサーカス』(講談社)が傑作だったことも、じつにカッコいい。人生の成功者、と呼んで差しつかえないだろう。ま、ご本人は「ほめ殺し?」とニヤニヤと笑いながら否定しそうだけど。
東京外大ロシア語科に在学中の83年、デビュー作『優しいサヨクのための嬉遊曲』でいきなり芥川賞候補となり、86年まで候補となることじつに6回。「吉行淳之介以来の美男作家登場!」と騒がれ、がしかし、芥川賞選考委員だったその吉行に「この男の書くものは、毎回、期待してページを開き、頭にきて閉じる」と愛憎だだ漏れの苦言を吐かせた男。結局受賞しないまま人気作家の道を歩んだ島田さん本人が、その後同賞選考委員に就いたことは有名だ。